“Font Museum”(仮称)と,このサイトの位置づけ

はじめに

情報規格調査会 SC34/WG2小委員会,及び国際大学GLOCOM APフォント研究会では,文書の長期保存と,その再現性を保障するリファレンスの確保,文化的資産としてのフォントの保存,フォント関連技術の体系的提供,等を意図してWeb版“Font Museum”(仮称)の検討を行っている。

この内容と活動に関する一般の理解を得,かつ各方面からのアイデアをいただくことを狙いとして,実験の場として構築しつつあるのがこのサイトである。

あくまでも研究用であり,掲載フォントについても現在使用されているものを仮に表示しているだけであることをご了解いただきたい。

目的と意義

電子文書の使命は刻々と変化する情報を速やかに,かつ正確に伝達することと,確実に(なりすまし,改竄等の不安なしに)超長期にわたって保存し,これを正確に抽出することの二つの機能を持つことである。それゆえに構造化文書の意義がある。

構造化文書においてはスタイルと文書構造が分かれ,それによって構造化文書そのものには体裁情報が含まれない。スタイル情報を含めて保存することになるが,その場合においても,かならずしも長期経過後の再現性が保障されるものではない。

従来から,この問題についてほとんど関心が向けられていないように思われる。しかし文書を構成するもっとも基本的な要素である「フォント」が文書の期待保存期間を生き抜く保障はほとんどないことに注意するべきである。

完全な書体代替が行われうる書体は,もともと存在価値がない。したがって個々の書体はそれぞれ他にない特徴を備えているのであるから,ひとたび実在し使用実績ができた以上,そのフォントデータは半永久的に利用可能又は参照可能にしておく義務がある。

しかしフォントを制作・販売しているのは企業体であり,企業自体の寿命を考えればフォントメーカーのみにその義務を負わせることは現実問題としては不可能である。

そこで,いままでのフォント資産を知的財産権及びビジネスの権利を侵害しない形式において蓄積保存し,そのフォント実体を参照することができる“Font Museum”を設立することを早急に検討する必要がある。