現在のフォント環境は,
ということができる。しかし真の文書情報は書体不依存の単なるテキストではなく文意に合った書体の使用と相まって形成されるものであり,書体イメージの再現または参照は文書のアーカイブにとって必須要件とも言えるものである。
書体のイメージを何らかの形で保存することが必要である。その機構として“Font Museum”を構想した。しかしこれを民間の総意にゆだねることは非現実的であろう。フォントメーカーにとって書体(フォント)は貴重な財産であるから,原字(オリジナル・アートワーク)は実質的に門外不出としているところがほとんどだからである。
そこで可能な限り信頼性のある公的機関またはそれに類する機関が運営することを条件としなければならない。
国際大学GLOCOMはISO/IEC 10036のフォント登録機関となっているが,“Font Museum”が実現した場合,GLOCOMがその受け皿になることが検討されている。したがってつぎの課題は,
である。
現在は上記1,2について検討を進めており,3については未着手である。 そこで,1,2に関して現状の検討レベルを紹介しておきたい。
まず,保存すべきデータとしては以下のように考えている。すなわち,
である。
つぎにデータの形式であるが,グリフ形状データについてはフォントとしての流用をガードするという意味を含めて1文字1ファイルの画像データ(TIFFまたはJPEG)とし,それらの個々の文字ごとのコード,メトリクスデータなどはテキスト形式(CSVなど)で保有するのが現実的であろう。「必要に応じて文字の意味」というのは,記号類などにおいてグリフ形状だけでは意味がわからないものもあり得るからである。
現実的にどの程度の文書再現能力を持つかは別として,これによって理論的には文書体裁の再現が可能になると考えられる。